ワカトビのカラフルなベイビー達
2012年2月21日(火)
幼魚から成魚に成長する過程に現れる色や模様の変化には本当に驚かされます!!成魚とは全く違った姿をしている幼魚の場合は、識別が困難な場合が多いので、今回はそのいくつかを取り上げてみましたのでお楽しみください!ミナミハコフグの幼魚が、やっと穴から出てきてくれました!
写真提供:ワカトビゲスト Doug Richardson
魚が成熟期に達するにつれ、外見にも変化が現れます。もちろん変化が早いものもいれば、遅いものもいるのでそれぞれですが、通常成魚は幼魚と全く違う色をしていることがほとんどです。このクロハコフグもそのひとつです
スの成魚はメスの成魚よりカラフルなことが多いだけではなく、オスとメスが全く違う色をしていることもよくあり、色の違いから成熟度を見分けることもできます。
このオスのクロハコフグのようにハコフグ科の魚は、メスと比べるとオスの方が青みがかった色をしていることがほとんどです。
写真提供:ワカトビゲスト Bill Nyitray
成魚と幼魚の外見が違うことに少し触れましたが、行動にも違いが出てくるようです。
幼魚の時はどのように敵から身を守り、どうやって餌にありつくかというのが最大の問題ですが、成長すると子孫を残すことが一番の課題となります。そのことから、ナワバリを守るためや競争相手に対し攻撃的になったりするようです。
このカラフルで可愛い魚は皆さんもご存知のはず!クマドリカエルアンコウの幼魚です。
写真提供:ワカトビゲスト Saskia van Wijk
そしてここでは、色が変化したクマドリカエルアンコウの成魚の写真です。
サンゴ礁に住む魚達は、私達とは異なる方法で色を見分けることができ、幼魚の時と成魚とで色が違うのは、身を守るためのひとつの手段だとも考えられています。
写真提供:ワカトビゲスト Eric Cheng
ハナヒゲウツボは、背ビレの付いた細くて長い体とヘラ状の前鼻孔がとても特徴的です。
未成熟のオスは真っ黒なので目の位置も分かりづらいですが、黄色の背ビレを持っています。成熟したオスとは全く違うので、以前は違う種類のウツボだと考えられていたほどです!
写真提供:ワカトビゲスト Ken Knezick
ハナヒゲウツボは雄性先熟型で成長後、必要な場合にメスに性転換します。大きさは85cmほどまで成長し、オスがメスの生殖器を作り始めると黄色がかった青色に変化し、その後完全な黄色になります。メスのハナヒゲウツボを見られるのは珍しいことです。
成熟したオスは、目立つ綺麗な青色に黄色の背ビレ、前鼻孔と目を持っているので意外と簡単に見つけることができます。
写真提供:ワカトビゲスト Paul Sutherland
カラフルなイロブダイの幼魚も成魚とは全く違う色をしています。
写真提供:ワカトビゲスト Ken Knezick
ロブダイが成長するとこんな色合いになります。
ブダイ科の魚は、成長過程で色と模様を変えられるだけではなく、性別も変えられるというからまた驚きです!
アカククリの幼魚の素敵な写真を撮りたいと願うフォトグラファーはたくさんいらっしゃると思いますが、困ったことに外敵から身を守るために隠れていることが多いんですよね・・・
写真提供:ワカトビゲスト Romy Olaisen
アカククリの幼魚は黒地に明るいオレンジ色の縁取りがありとても美しいですが、成長するにつれオレンジ色は消えていき、黒地の部分は灰色に変わります。大きさは45cmほどまで成長します。
写真提供:ワカトビスタッフ Ana Sofia Ribeiro Fonseca
ニモのようにカラフルなツユベラの幼魚は、明るい赤地に鼻から尾ビレにかけて白のラインまたはスポットが5箇所あります。
成長していくと青緑色の体に青色の斑点と黄色の尾ビレが現れ、まるで全く異なった魚のように見えます。
写真提供:ワカトビゲスト John and Lauri
そして成魚になると、赤茶色の体に明るい青色の斑点が広がります。背ビレと尻ビレの縁にも青色の斑点が見られます。オスは体の中心に垂直のラインが入り全体的に濃い色をしている所が、メスと異なる点です。
ベラ科のオスの成魚は、リーダー的存在の大きくてカラフルなものと、小さくて灰色がかったさえない色との、大きく分けて2つの種類に分かれます。
大きいオスがいなくなったり、リーダー的存在のオスより優れたメスが出てきたりすると、その能力のあるメスはオスに性転換します。その際、生殖器官だけではなく外見や性格も変えてしまうというから、また驚きです!!
写真提供:ワカトビゲスト Joyce and Frank Burek ©
ほとんどの魚が色や模様を変化させながら、成長していくことが分かりました。
この写真も皆さんご存知のはず、美しいタテジマキンチャクダイの幼魚です。
写真提供:ワカトビスタッフ Ana Sofia Ribeiro Fonseca
タテジマキンチャクダイの幼魚には渦を巻くラインが入っていましたが、成魚になると青と黄色の縦縞模様に変わり、幼魚成魚共にとても美しい魚のひとつです。
魚によっては、その時のムードや繁殖時、身を守る時、捕食時に色や模様を変えられる能力を持つ種もいます
ヒレナガススメダイの成魚がカラフルなサンゴ礁に上手に溶け込んでいます。
写真提供:ワカトビゲスト Ginnie Reynolds
ヒレナガスズメダイの幼魚には、明るい黄色地に2本の黒い太いラインが入っており、全く違う姿をしています。
写真提供:ワカトビゲスト Ken Knezick
それでは、魚はどのように色を変えてるのでしょうか?
多くの魚類、甲殻類などの海洋生物は、色素胞という不規則な細胞を持っています。これらの細胞が、神経やホルモンにより刺激され集中したり離れたりすることで、色の強度を変化することができるのです。色素胞が重なり合い、異なる色素が混ざることで赤や黄色、オレンジ、茶色、黒などの色を作り出すことができるのです。
魚の鮮やかで様々な模様や色は、魚の皮膚にある色素胞の密度によるものなのです!
写真提供:ワカトビゲスト Glenn Patton
あまり一般的ではない色素細胞ですが、多くの魚は光を反射させる細胞を持っています。これらの細胞は、短い波長のピンク、緑色、青色や銀色などの虹色系の色を作り出することができます。
銀色っぽい魚は、皮膚にいくつかの層の細胞を持っているため、ほとんどの光を反射し背景に溶け込むのに役立っています。
写真提供:ワカトビスタッフ Liquid Motion Film ©
魚の色の変化については、様々な種類の魚で研究されており、ホルモンや神経またはその両方でコントロールされていると考えられています。
タテスジハタの幼魚は明るい赤紫色で、ハナダイの仲間に擬態していると考えられています。
写真提供:ワカトビゲスト Dieter Freundlieb
タテスジハタの成魚もまた幼魚とは全く異なった色をしていますが、きっとこういった色の方が様々な環境に対応しやすいのでしょう。
写真提供:ワカトビゲスト Collin Wall
ここでひとつ言えることは、擬態、防御もしくは他の魚に何かを伝えるため瞬時に色を変化させる魚と、成長していく過程でゆっくり色を変化していく魚に関係なく、色の変化は、水中生物が生きていくうえで決して欠かせないもののようです。