パーフェクト・ショットを撮るためのテクニック
2012年8月3日(金)
リーフに沿ってのんびりダイビングをしている時に突然、魚が “トン” とぶつかってきた様な経験はありませんか?きっと、その魚はあなたに興味を持ち、普段より近くに寄ってきたのでしょう。今回は、そんな魚の心についてご案内したいと思います。
リーフに沿ってのんびりダイビングをしている時に突然、魚が “トン” とぶつかってきた様な経験はありませんか?
きっと、その魚はあなたに興味を持ち、普段より近くに寄ってきたのでしょう。でもそんな時、即座にカメラを向け、カラフルでフレンドリーな魚達の写真を撮ろうとすると・・・突然、彼らは一目散に逃げだし、隠れてしまったりするものです。
カメラを構えると、なぜか魚達は逃げだし隠れてしまいます。どうして、そんなに早く泳ぎ去ってしまうのか不思議に思ったことはありませんか?
今回は、いくつかの秘密を皆様にお教えしましょう!
その秘密を知ることで、素敵な写真が簡単に撮れるようになるだけではなく、魚達へもっと近づくことが出来るようになるでしょう!
まず第一に、海洋生物達の違いをよく観察してみましょう!
きっと、スノーケリングやダイビングをしている時に、優雅に中層を泳ぐ魚もいれば、サンゴや岩の上などでピタッと止まっている魚、糊でくっ付けられたように砂地で着底している魚がいたことに気付くはずです。
写真提供:ワカトビゲスト J Watt
魚達の浮力コントロールは、浮き袋によって調整されています。側面もしくは背面にある浮き袋内にガスを出し入れし、余分なエネルギーを使う事なく浮力の調節を行え、まさしく私達ダイバーが使う BCD と同じ役目をしているのです!
そして、一部の魚には浮き袋を震わせ、音を出す魚もいます。音を出す理由は警戒音や威嚇音だけではなく、求愛行動にも使われているようです。また、音を感じるための器官として使っている魚もいるそうです。
浮き袋を持たない魚は、水中を泳ぎ回るのにたくさんのエネルギーが必要となるため、水底に潜んでいる事が多く、必要な時にだけ泳ぎます。あまり動かない被写体は撮りやすいので、フォトグラファーにとっては朗報ですよね!?
ツバメウオやフグ、カワハギ、ハタ、チョウチョウウオ、アイゴ、タツノオトシゴ、ヨウジウオ、テンジュクダイの仲間などは浮き袋を持った魚です。
ほとんどの硬骨魚類が浮き袋を持っていますが、これらの魚達は、ダイバーがあまりにも接近しすぎると、離れていく傾向にもあります。しかし、魚の下側からゆっくりアプローチすると、魚達を怖がらせる事なく接近できるので、より良い写真が撮れるはずです。
私達がどんなに完璧な中性浮力をとっていても、水中に住む彼らに敵うはずはありません。キーポイントは、いかに魚を怖がらせず接近できるかにあるのです!
一方、浮き袋を持たない魚達は、エネルギーを無駄にしないため、静かに水底で過ごしている訳ですが、いくつかの魚は完璧なカムフラージュ術で身を隠し、獲物を待ち受ける者もいます。
こういった魚達はほとんど動かない為、フォトグラファーにはとても協力的です!パーフェクト・ショットのトリックはアプローチにある事を忘れないでください!
しかし、あまり動かない魚でも上手にアプローチしないと、矢のようにピューンと逃げ去ってしまうので、ゆっくり呼吸をするよう心がける事で泡の量や音を少なくし、そして私達の存在に慣れるよう、時間をかけて近づくようにしてみてください。そうすればきっと、魚達は逃げずにいてくれるはずです。
写真提供:ワカトビゲスト Lynne Fieber
フサカサゴ科の魚は、浮き袋を持っていない魚の典型的な例です。様々な場所で見られるオニカサゴなどは、有毒な棘を備えています。 サソリのように“刺す”という事から、英語ではScorpionfish(スコーピオンフィッシュ)と呼ばれており、その鋭い棘は、有毒な粘液でコーティングされています。
何百種類も存在するフサカサゴ科は、そのほとんどがカムフラージュの達人です。そのため、慎重にアプローチしてパーフェクト・ショットを撮る前に、まずは上手に隠れている彼らを見つけなくてはならないのです!
写真提供:ワカトビゲスト Alan Townsend
エソやエイ、サメ、ゴンベ、コチ、ギンポ、ハゼなども浮き袋を持たない魚になります。これらの魚は、あまり動き回らないため、カメラのセッティングをする時間があります。ゆっくり落ち着いてパーフェクト・ショットを狙いましょう!
写真提供:ワカトビゲスト Richard Smith
驚くことに縄張り意識が高い魚ほど、フォトグラファーに対し無意識のうちに接近してくるので、シャッターチャンスをくれたりします。
これらの魚は、住み家や自分たちのテリトリーを守ろうと、彼らより大きい魚はもちろん、ダイバーやカメラにも威嚇してきます。テリトリーに侵入してくる魚には、噛み付いたり、突進して行ったり、ジクザグに泳いで怖がらせたりしてテリトリーから引き離そうとします。
侵入者がカメラの場合は、カメラに寄って来るため、小柄で動きの速い魚を正面から撮れるチャンスです!例として、クマノミやスズメダイ、ギンポの仲間などがあげられます。
クマノミをはじめとするスズメダイ科の魚もまた、非常に縄張り意識が高いため、近づくとカメラのすごく近くまで寄ってきます。そんな時は、素晴らしい写真を撮る絶好のチャンスです!
しかし、モンガラカワハギ科に属する一部の大きな魚が卵を守っている時は、非常に攻撃的になります。特にムラサメモンガラとゴマモンガラは、ダイバーやスノーケラーがテリトリーに入ってくると、巣を守るために噛み付いてくる事もあるので気をつけなければなりません。
モンガラカワハギは、硬い貝殻を噛み砕くための強力なアゴと頑丈な歯を持っており、侵入者に深刻なダメージを与える事ができるので大変危険です。激しく興奮し苛立っているような場合は、フィンなどを噛まれる前に速やかにテリトリーから出るようにしましょう!
被害を未然に防ぐ方法は、彼らの領域に入らないようにするのみです。生物の行動をよく確認し行動するようにしましょう!
小さな魚達は、可愛い被写体になってくれます!
好奇心が旺盛な幼魚や赤ちゃん達は、ダイバーやカメラに寄ってきてくれます!
クリーニングステーションもまた、いい写真を撮れるチャンスの高い場所です!
クリーニングをする魚達は、小さなヒレで“お客様”に優しく触れ、リラックスできる状態を作り出します。このことからも、クリーニング中のリラックスした魚に、接近しやすいということが分かります。しかし、近づきすぎると両方の魚が逃げてしまうので、彼らの邪魔をしないように、多少の距離を保ちながら、ゆっくりと動くごとがとても重要です。
カムフラージュが上手な魚は、身を守るために周囲の環境に完璧に溶け込んでいる場合がほとんどです。
通常、誰にも気付かれない様な場所にいることが多く、カメラを向けられても知らない振りをして、じっと動きません。そうなのです!このような生物は、ゆっくりアプローチする以前に、彼らを見つけるのが大きな課題になります!
エビやカニなどの小さな甲殻類は、とても “絵になる”生物のひとつです。
小さな海綿やイソギンチャクの近く、ウミシダの中などとても小さな場所に生息しているため、フォトグラファーのターゲットにされやすいですが、とても繊細な生き物達なので、中性浮力をきちんと保ち、彼らの環境にダメージを与えないよう、呼吸を整えながら、ゆっくり静かに動くようにしましょう。
フォトグラファーの強い味方、ウミウシについて触れずにはいられませんよね!!
どんな時ものんびりなウミウシは、アプローチが簡単なだけではなく、ベストアングルで撮らせてくれたり、素晴らしい色彩で楽しませてくれます。
ちょっと調べてみると、カラフルで様々な形をしたたくさんのウミウシがいることに、きっと気づくはずです!海の中ではこのように魅力的な生き物達が、ポーズをしてカメラマンを待っているのかもしれません!
最後に、フォトグラファーにとって一番必要な物は、最新のカメラ機材やアクセサリーではなく、まず落ち着くことです!
被写体を定めたら、まず数分は動かずゆっくり呼吸をしながら周囲を注意深く見てみましょう。そうすることで、魚達は少しずつ私達に慣れる事ができ、近くに来てくれ、最高の表情を見せてくれるはずです!時間をかけて、ゆっくり待ってみてください!
グット ラック!!