可愛らしいフグたち
2012年8月14日(火)
子犬の様なタヌキの様な、こんな可愛らしい顔をしたフグを嫌う人はいないですよね?子犬の様なタヌキの様な、こんな可愛らしい顔をしたフグを嫌う人はいないですよね?
フグ科の魚たちは、大きな棘を持つハリセンボン科にも良く似ていると思いませんか?(ハリセンボン科の魚達は、皆さんもご存知、襲われたときなどに体を膨らませ棘を立てて身を守る魚です。ストレスになるので、むやみに膨らまさないで下さいね。)
Photo copyright: ワカトビゲスト Larry Abbot
泳ぎがとても上手という感じではありませんが、フグ科の魚は胸びれ、背びれ、臀びれ、そして舵の役目を果たしている尾びれを上手に使って泳いでいます。ゆっくり泳いでいるためターゲットにされやすいですが、襲われそうになると、それぞれのヒレをフル活動させて一目散に逃げ出します。この素早い避難技はフグ科のディフェンス方法のひとつでもあります。
そして、この写真のようにハリセンボンの目には、水面からの明るい光を反射できる玉虫色の層があります。この層が、サングラスのような役割を果たしているため水中で物事をはっきり見ることができ、エイなどの外敵から身を守るのに役立っています。
Photo copyright: ワカトビゲスト Steve Miller
ケショウフグなどの大型種は最大で66cmほどにまで成長し、甲殻類や貝などの軟体動物を噛み砕くための大きな4本の歯を持っています。体には、私達の指紋のような模様があり、その模様は個体により少しずつ異なるそうです。サンゴ礁周辺では、単独で行動していることがほとんどです。
成魚は、沈船や岩陰、洞窟、テーブルコーラルの下などで良く見られますが、用心深い幼魚は、カイメンの間などで隠れながら生活しています。
この種のフグは、頑丈な歯を使いカイメンを主にエサとしていますが、サンゴ藻などの藻類やホヤ、貝類そしてカニ類も食べています。他のフグと同じように、皮膚や内臓には強い毒を持っています。
Photo copyright: ワカトビゲスト Doug Richardson
テトロドトキシンという毒は、主にフグの卵巣や肝臓にありますが、腸や皮膚、そして筋肉の中にも微量の毒を持っています。
これらの毒は、サメなどの大きな生き物には、さほど影響ありませんが、私達人間にとっては命を脅かす危険な毒です。猛毒を持っているにもかかわらず、日本やお隣の韓国では、高級料理として食されています。
Photo copyright: ワカトビゲストWayne Macwilliams
通常フグはゆっくりと泳いでいる魚ですが、時折ものすごいスピードを出すこともあります。そして、危険を感じた時は、素早く大量の水を弾力性に優れた胃に入れて体を膨らますのです! 大きなボールのようになると誰も飲み込めないので、このようにして身を守っています。
Photo copyright: ワカトビゲストSteve Miller
ハリセンボンの体は、長い有毒な棘で覆われているため漁師さん達は、網にかかったとしても決して触れることはないそうです。
幸か不幸か、ハリセンボンが膨張する前に素早く捕まえ、飲み込んだとしても途中で膨らんだせいで窒息し死んでしてしまったり、たとえ完全に飲み込んだとしても、胃の中が大量のテトロドキシンという毒に満たされ死んでしまったりするため、無害な種類もいますが、フグを食べることは大きな魚にとっても命取りになります。
Photo copyright: ワカトビスタッフ Guy Chaumette, Liquid Motion Film
フグだけが、ユニークな防御方法を持っている訳ではありませんが、実はとてもユニークな方法で求愛するのです!
非常に凝った求愛表現の後に、オスはメスを産卵場所である浅瀬へ導きます。フグの卵はとても軽いので、孵化するまでの4日から7日間は水面を漂います。
Photo copyright: ワカトビゲスト Kendra and Mike Chittenden
フグは、左右の目を別々に動かすことが可能なだけではなく、多くの種類がカメレオンの様に、環境の変化に応じて体の柄や色、輝度を変えることができるのです!
ほとんどのフグの体色は地味ですが、鮮やかな色彩と独特な模様をしている種でも自然と周囲に溶け込むことができるため、捕食者から身を隠そうとはしません。
Photo copyright: ワカトビゲストLisa Collins
ほとんどのフグ科は雑食で、岩やサンゴに生えた藻を食べたり、そこに生息する無脊椎動物をエサとしています。また大型のフグは、エビやカニ、貝類といった軟体動物もエサとしています。
サザナミフグも雑食ですが、ホヤやウニ、ヒトデを好んで食べているようです、その他にも褐虫藻や羽織虫、甲殻類、カイメン、二枚貝、ヤドカリ、ハネガヤ、イシサンゴや藻類といった物も胃の中で発見されています。また、オニヒトデの天敵としても知られています。
Photo copyright: ワカトビゲスト Joachim Luttenberger
オニヒトデは、たくさんの腕を持つヒトデで、体中に猛毒の棘を持ち、サンゴを食害してしまうことでも良く知られています。また、このヒトデは世界で二番目に大きいヒトデでもあるのです。
ハマサンゴ類やコモンサンゴ類をよく好み、たくさんの菅足を使用して健康なサンゴの上に登り、サンゴのポリプを全部食べてしまいます。枝サンゴの用に着底しづらそうなサンゴの表面でも、上手に密着しポリプを食べてしまいます。サンゴに密着すると表面全体を覆いはじめ、液状の消化酵素を分泌し栄養分を吸収していきます。その結果、サンゴの外骨格は白化してしまい、少し経つと、藻類や繊維細胞が繁殖し始めます。
ひとつのオニヒトデは、一年で約6平方メートルの生きているサンゴ礁を食害してしまうそうです。
長年に渡り、オニヒトデの行いについて多くの議論が交わされてきました。 オニヒトデは、広範囲のサンゴを破壊してしまい、生態系に与える影響も強いため、取り除くべきだと今までは考えられてきました。しかし、新たな科学的証拠によると、オニヒトデのサンゴの消費は自然な成り行きだということだけではなく、ゆっくり成長するソフトコーラルなどが成長するためのスペースを作っているとも考えられているそうです。ゆっくり成長する様々なサンゴを、急成長するサンゴの圧力から守り、サンゴ礁の多様性を維持していく上で重要な役割を果たしているのかもしれませんね。
ホラ貝以外にも、オニヒトデの天敵としてフグ科やモンガラカワハギ科の魚が挙げられますが、捕獲された時や捕食されている間でも再生し続けるというとてつもなく優れた再生機能を持っているため、絶滅には到底至りません。盤の部分は、腕なしで再生する事が出来るだけではなく、たとえ腕だけであっても完全に再生する事ができてしまうほどです!
ワカトビのように美しいサンゴ礁が広がる海域には、オニヒトデの天敵も数多く生息しているため、生態系のバランスを保っていますが、過激な漁業を続けてきた海やホラ貝を乱獲してきた海は、オニヒトデの天敵が減ってしまっているため、生態系のバランスが崩れてしまっている海も、世界ではたくさんあります。
フグ科の魚は、定期的にホンソメワケベラやホンカクレエビなどからクリーニングしてもらうのを好み、クリーニングしてもらっている間は(私達がマッサージを受けている時と同じですね。)とてもくつろいでいるため、ダイバーもゆっくりアプローチすると、ここまで接近することが出来るのです!
コクテンフグはサンゴが豊富なエリアを好み、日中はミズガメカイメンの淵で休んだり、ケーブやクレバスの近くでホバーリングしていたりしますが、夜間はカイメンやソフトコーラルの近くを好むようです。
このフグは、主にハードコーラルを主食とし、枝サンゴのように分岐のあるサンゴの先を噛み砕いて食べたり、イソギンチャクや藻類、二枚貝、エビ、カニやナマコも食べたりしているようです
単独行動をしていることがほとんどですが、時折ペアで見かけることもあります。
コクテンフグは、灰褐色や黄色、黒っぽい個体など体色のバラエティーが豊かで、顎の周りが黒く、体全体に黒い斑点があるのも特徴の一つです。この写真のように、オレンジ色または金色の個体はワカトビのエリアでもとても珍しい色です!
このように、様々な個体が存在するフグ科の魚は、子犬の様な可愛い顔をしているので、人気の被写体でもあります。
Photo copyright: ワカトビスタッフ Guy Chaumette, Liquid Motion Film