意外と知らないカイメンについて
2012年9月18日(火)
1. 私達が、食器や車を洗うために日常使っているスポンジについて深く考えた事はありますか? 何で構成されているのか、不思議に思った事はありませんか?昔のヨーロッパの人々は、水道水のフィルターやヘルメットの内側のクッションとして様々な目的のために柔らかいスポンジを使用してきたようです。合成樹脂のスポンジが発明されるまでは、清掃用だけではなくペンキを塗るためや陶磁器を作る際にも使われていたようです。
全てのスポンジは、海に生息する海綿動物(カイメンとも呼ばれている。英語:スポンジ)から収穫されていましたが、過剰な収穫が続き20世紀半ばで絶滅の危機にさらされたため、最近では生態系の整った美しい海でしか、巨大で様々な種類のカイメンは見られないと言われています。
写真提供:ワカトビゲスト: Warren Baverstock verstodigital.com
2. 動物が進化してきた過程で考えてみると、海綿動物は5億年前から存在する最も原始的で単純な動物であり、多細胞生物で最も古く生きている動物なのです!
カラフルで健康なサンゴ礁と巨大なカイメンが生息するワカトビの海では、多種多様な生物に遭遇することができるだけではなく、特に広角レンズで水中写真を撮るフォトグラファーにおすすめできる場所です。生物はそれぞれ異なった生息地を好みます。様々な生息地があるということは、自然とそこに住む生物達も多様ということになります。ワカトビの海は、そんな小さな生物達を好む、マクロレンズ派のフォトグラファーも魅了させてくれる場所です!
写真提供:ワカトビゲスト: Warren Baverstock verstodigital.com
3. 水の流れを最大限に活用できるよう、壷状のものや扇状、筒状のものなど形も様々で、同じ種類でも生息環境によって色や形が異なる場合もあるようです。
写真提供:ワカトビゲスト:Luc Eckhaut
4. 熱帯の海に生息するスポンジは環境が変化する中、毎年ほんの少しずつ成長し、200年以上生きてきたとされています。ワカトビのように大きなカイメンがたくさん生息する海は、生態系が整っている証拠です。
写真提供:ワカトビゲスト:Steve Miller
5. カイメンは表面に子孔と呼ばれるたくさんの穴を持っていて、ここから水を取り込んでいます。 呼吸や消化、排泄を行うためのはっきりした器官を持たない代わりに、水が循環することにより全ての機能をサポートしています。水を取り込む際に、食物も一緒に摂取しているのです!
写真提供:ワカトビゲスト:Warren Baverstock
6. ウミガメの中でもタイマイは藻類や刺胞動物、クラゲ、イソギンチャクを主なエサとしていますが、特にカイメンを好んで食べ、全体の70%から95%はカイメンを食べているそうです! カメが食べるいくつかのカイメンには、毒性があるものもあるため、他の生物にとってカメの肉は、有害になる場合もあります。
ワカトビには、タイマイのほかに藻類や海草を好むアオウミガメが生息していて、私達によく姿を見せてくれます。
写真提供:ワカトビゲスト:Wayne MacWilliams
7. 他のウミガメと比べると、タイマイは尖ったくちばしをしていて、前足に2つの爪を持っている点の他に、甲羅の縁がギザギザしていることも大きな特徴として挙げられます。
写真提供:ワカトビゲスト:Luc Eckhaut
8. 胃腔と呼ばれるカイメンの内側の空洞部には、鞭毛をそなえた襟細胞が多数あり、この鞭毛によって小孔から大孔への水の循環を引き起こしています。中に運ばれた水はフィルターを通じ、栄養のある粒子と酵素とに分けられた後、大孔と呼ばれる開口部から水を排出しています。
9. こんな白い煙のようなものを見たことがありますか?
カイメンは無性生殖と有性生殖の両方を行うのですが、無性生殖として表面から目が成長して繁殖するのもあれば、芽球と呼ばれる芽を体外に放出して繁殖する種もあります。カイメンの一部が水の流れや波により壊れてしまっても、適切な表面に再接続し、小さいながらも本来の働きをし始めます。
多くの個体が、卵と精子の両方を生産する雌雄同体で、ほとんどの種が月のサイクルにそって産卵を繰り返しています。
写真提供:ワカトビゲスト:Kendra & Mike Chittended
10. ワカトビのように様々な生物が生息している海では、生活空間の競争になります。カイメンの根元部分になる硬い部分には無脊椎動物なども住んでいるため、いくつかのカイメンは他の生物が嫌がる物質を発し、自分のスペースを確保したりします。
このような有機化合物がカイメンから多数発見されていて、 抗 HIV 薬として用いられている薬と類似した構造を持っていたり、心臓病や関節炎などに有効である構造を持っていたりするため、医薬品の候補として期待されています。
写真提供:ワカトビゲスト:Nicolas Aznavour
11. カイメンは、様々な生物の宿主でもあります!
何か隠れた生物を発見できるかもしれないので、ダイビング中にカイメンを見た時は、周りをチェックしてみましょう!
写真提供:ワカトビゲスト:Wayne MacWilliams
12. ドゥニア バル(インドネシア語:新世界)というダイブサイトでは、ドクウツボのペアがミズガメカイメンを住み家にしています。
ドクウツボは、ウツボ科の中で一番大きい種で、体長3m/体重30kg程にまで成長します。鋭い歯と大きい口で恐そうな顔に見えますが、挑発しない限りダイバーに対し積極的に攻撃してくることはありません。主に魚や甲殻類をエサとし、よくハタと協力して一緒に狩りをしています。
ウツボは視力が悪いため、底を這いずりながらエサを探します。そしてハタは、獲物が割れ目や穴に入るのを見かけると、近くに協力してくれるウツボがいないか探します。そしてウツボを見つけると、頭と背びれを振りはじめ獲物に向かい変なダンスをし始めます。そしてその隙を狙ってウツボは獲物に襲いかかるのです!
一部の海洋学者達は、このように協力しながら狩りをする知識は、私達人間が彼らの知性を進化させたと考えられているそうです。
写真提供:ワカトビゲスト:Luc Eckhaut
13. この写真のイロカエルアンコウは、完璧に白いカイメンに擬態し、何も知らない魚や甲殻類を待ち伏せして狙います。また、カエルアンコウは頭部の独特な釣り竿(先には疑似餌のエスカがついています)を使って、獲物を誘き寄せます。
カエルアンコウは生息する環境に似せるために、ゆっくり色や質感を変えることもできるそうです。私達ダイバーが見つけるのに苦労するのが、うなずけます!
写真提供:ワカトビゲスト:Ken Knezick
14. カイメンの周りをチェックしてみると、割れ目に隠れながら生活している小さなハゼやギンポなどを見つけることが出来ます。
ギンポの仲間は、特殊な腹びれを持っているため、岩やサンゴの枝、カイメンなどにも上手に着底することができます。目の上には、皮弁と呼ばれるまつ毛のようなものがあり、これは藻類などに似せカモフラージュするためのもののようです。
ハゼとギンポの簡単な見分け方は、尾の違いにあるのをご存知でしたか? ギンポの仲間は常に曲がった尾をしているので、今度確かではない時は尾をチェックしてみるとすぐに分かりますよ!
これらの小さな魚達は警戒心が強いため、アングルを合わせるのに苦労しますが、落ち着いて撮影すると、彼らの笑顔もアップで撮ることができます。
写真提供:ワカトビゲスト:Lisa Collins
15. ワカトビのダイブガイド(ダイブ・エクスペリエンス・マネージャー)は、生物が好む生息地をよく知っているため、小さな生物を見つけるのがとても上手です! 滞在中はそんな彼らから、水中世界の秘密を聞き出してみましょう。
写真提供:ワカトビゲスト:Steve Miller
16. ピンクスクワットロブスターは、小さい生物を撮影するのが好きなフォトグラファーに人気の被写体です。鮮やかなピンク色に、赤い目、そして明紫色の細線が体中に生えているのでとても派手なエビです。日本ではまだ記録がないため和名はありません。
コシオリエビ科に属するので、何とかシュリンプという名前かと思うかもしれませんが、なぜかスクワットロブスターと英語では呼ばれています。ミズガメカイメンの割れ間を生息地として好むため、今度ダイビングに出かけた時はチェックしてみてください!
写真提供:ワカトビゲスト:Steve Kraus
17.
写真提供:ワカトビゲスト:Warren Baverstock
18. 海綿質繊維からなるカイメンは、硬い骨片を持たないため、スポンジとして様々な用途で使われてきました。地中海産、紅海産のカイメンが柔らかく、品質が高く重宝されているようです。
カイメン/スポンジについて、色々発見がありましたか?
写真提供:ワカトビゲスト:Frank Owens