知ってビックリ!!イソギンチャクとクマノミたちの関係
2013年11月13日(水)
ワカトビのエリアには、9種類のクマノミの生息が確認されています。今回はそのクマノミの仲間たちと、そのホストであるイソギンチャクとの関係についてまとめてみました。この関係は、クマノミとイソギンチャクの両方にメリットがあると思いますか?
1. たくさんの生物が生息しているサンゴ礁には、様々な生態系が形成されていて、他の動物と一緒に暮らす関係にもいくつか種類があります。きっと一番分かりやすいのが、クマノミの仲間とイソギンチャクの関係でしょう。共生関係とは、2種類の無関係な生物が一緒に生活している事を指しています。
この共生関係は、双方にメリットがある場合と、片方にメリットがありもう片方には無害な場合、そして片方にはメリットがあるのに、もう片方にはデメリットになることがあります。
それでは、クマノミたちとイソギンチャクの関係はどのようになっているのでしょうか?片方にメリットがあるのか、それとも双方にメリットがあるのでしょうか?それでは、詳しく見ていきましょう!
写真提供:ワカトビゲスト Jett Britnell
2. クマノミにメリットがある:
イソギンチャクの触手に小さな刺細胞(刺胞)があることは、ほとんどのダイバーがご存知のはずです。
この特性として、イソギンチャクはクマノミのホストとして、クマノミ以外の動物を排除しようとします。クマノミたちはイソギンチャクの刺細胞に順応する能力を身につけているので、捕食者に脅かされるとホストであるイソギンチャクの中に一時的に逃げ込み、姿をくらまします。そして敵がいなくなると、またイソギンチャクの近くを泳ぎ始めるのです。
写真提供:ワカトビゲスト Mark Strickland
3. ホストなしでは、危険が多すぎ生き延びるのにとても苦労するため、クマノミの仲間たちは、いつもイソギンチャクがある所で生活しています。しかし、ウツボやヘラヤガラ、カサゴ、タイなどのいくつかの魚は捕食できることを知っているのか、度々襲われることがあります。
Dr. Gerald Allen氏の研究によると、それぞれのクマノミたちはイソギンチャクのすぐ近くで捉えられ、食べられてしまったそうです。特にハタ科の魚のようです。
写真提供:ワカトビゲスト Rodger Klein
4. またその研究で、イソギンチャクをホストとするクマノミの仲間たちは、サンゴ礁に生息する他の魚類より死亡率が低いことも明らかになっているのですが、クマノミの種類によって依存関係が異なるようです。
あまり泳ぎが上手ではない、ハナビラクマノミやカクレクマノミ、スカンクアネモネフィッシュ、クラウンアネモネフィッシュはイソギンチャクと密接した関係にあるようです。
あまり敏速でないこの種の魚が泳ぐ時は、胸びれをよく使い他の種より大袈裟に泳いでいるように見えます。また、イソギンチャクの近くからほとんど離れないで過ごし、捕食者がアプローチしてくると、急いでシェルターに隠れるのです!
写真提供:ワカトビゲスト Scott Michael
5. それとは対照的に、オレンジフィンアネモネフィッシュやクマノミのイソギンチャクとの関係は、少し緩いようです。これらの泳ぎの上手な魚は、しっかりとした尾びれを使っているため効率的な泳ぎができます。
この種の魚は、ホストのイソギンチャクから1m以上離れて水中を漂うプランクトンを食べたり、1つのイソギンチャクからもう1つのイソギンチャクに移動したり時など、ある程度の距離を泳ぐことができるようです。そのため、卵を狙う捕食者にも果敢に立ち向かっていく傾向にあります。例えば、私達ダイバーもイソギンチャクに近づき過ぎると、クマノミたちが寄ってきて噛まれる可能性もあります。 それが同じシチュエーションでも、ハナビラクマノミなどはイソギンチャクに隠れ、襲ってくることはないでしょう。
それぞれのクマノミの仲間が、どのくらいホストであるイソギンチャクに依存しているのかは、尾びれの形状を見れば分かります。ほとんどの場合、ホストに依存しているクマノミの仲間は丸みをおびた尾びれを持っているのに対し、ホストであるイソギンチャクにあまり依存していない種は切り込みのある尾びれをしています。尾びれを見ると、泳ぐ能力の高さも知ることができるということです!
写真提供:ワカトビゲスト Rob Darmanin
6. イソギンチャクにもメリットがある:
クマノミたちのホスト役であるイソギンチャクにもメリットはあるのですが、イソギンチャクはクマノミたち無しでも生きていけるようです。(少なくとも一部の地域に限る。)それでは、イソギンチャクはクマノミとの共生関係からどの様な利点を得ているのでしょうか?
1つのメリットは、クマノミたちが共生することにより、イソギンチャクの成長の速度と無性生殖の率を増大させることにあります。例えば、ある研究ではセンジュイソギンチャクにオレンジフィンアネモネフィッシュを住まわせたところ、クマノミたちがいないイソギンチャクより3倍もの早さで成長したことが報告されています。2種類またはそれ以上のクマノミたちを住まわせているイソギンチャクもまたとても高い核分裂の確率を持ち、魚のいないイソギンチャクはこの比率もとても低かったそうです。
写真提供:ワカトビゲスト Alvin Rosenfeld
7. イソギンチャクをホストにしている生物は、クマノミの仲間たちだけではなく、褐虫藻として知られる単細胞の藻類も共生しています。
イソギンチャクは、この褐虫藻にも生きていくための場所を提供する代わりに、この藻類が光合成によって得た生産物をイソギンチャクは貰っているのです。これにより、イソギンチャクに共生する褐虫藻にもメリットがあることが分かります。そして藻類は、イソギンチャクに住む魚の排泄物を栄養源として活用しています。
研究では、イソギンチャクが魚を住まわせることにより触覚の再生が魚のいないイソギンチャクより早く行われるだけではなく、魚のいるイソギンチャクの方がたくさんの褐虫藻を含んでいることも明らかになっています。
写真提供:ワカトビゲスト Rodger Klein
8. 無機化合物だけが褐虫藻の源なのではなく、魚たちが泳ぎ回ることで触覚が刺激されイソギンチャクが開くことで、触覚や皮膚のひだで酸素が豊富な海水の循環を容易にし、イソギンチャクの口からも残骸を取り除きキレイに保つこともできます。
ある研究では、ツーバンドアネモネフィッシュが住んでいたサンゴイソギンチャクは、魚がいないイソギンチャクより大幅に触手を広げていたことが明らかになっています。触手を大きく広げることで、多くの表面積に日光が当たるようになり、その結果、褐虫藻が光合成しより多くの栄養分がイソギンチャクに渡るようになるのです。
また研究者たちは、魚が小さすぎるまたは全く魚がいない場合は、イソギンチャクが縮んでしまい、時には死んでしまうことも判明したそうです。
写真提供:ワカトビゲスト Warren Baverstock
9. また、大きい魚のいるイソギンチャクは、イソギンチャクを狙う捕食者から身を守れるという重要なメリットもあります。一部のエリアでは、クマノミたちがいないイソギンチャクは、大型のチョウチョウウオなどにすぐに食べられてしまうそうです。
例えば、研究者たちがグレートバリアリーフのイソギンチャクから魚を取り除いてみると、どうやら食べられてしまったようで24時間以内になくなっていたということもあったそうです。
紅海のあるエリアでは、ツーバンドアネモネフィッシュがいなくなってしまうと、チョウチョウウオの一種がイソギンチャクを攻撃し、イソギンチャクはサンゴ礁の穴の中に隠れてしまうようになったということもあったそうです。
日本の様な亜熱帯の地域では、イソギンチャクを狙う捕食者があまりいないため、魚のいないイソギンチャクでも健康なイソギンチャクが確認されています。しかし、インドネシアのようにもっと熱帯の気候のエリアでは、ホストであるイソギンチャクのほとんどがクマノミの仲間の一種または数種を共生させているようです。
写真提供:ワカトビゲスト Eric Cheng
10. かつて、クマノミたちはイソギンチャクを食べて生活していると考えられていました。しかし、そのような行動の報告がダイバーに珍しがられたり、熱帯魚を育てる人が必要以上にエサをあげてしまったりすることに繋がってしまいました。そして、クマノミの仲間たちは、エサを食べやすくするためにイソギンチャクの触覚に当てるようになってしまったのです。野生の世界では、飲み込むことのできない物は捕まえないので、このような行動は絶対にしない訳です。そして、結果として、クマノミたちとイソギンチャクの両方にメリットがある素晴らしい共生関係は成り立たなくなってしまったのです。
もし今度ダイビングをする機会があったら、イソギンチャクの触手の中で泳ぎ回るクマノミたちをちゃんと観察してみてください。そして、この共生関係がいかに重要であることを思い出していただけると、嬉しいです!
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