2004年4月25日(日) メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)

2004年4月25日(日)

今日は、メナドから車で1時間30分ほど移動して、スラウェシ島北東部にあるレンベ海峡でダイビングをした。通のダイバーの間では人気の超レアものマクロが楽しめるポイントだ。僕がちょっとマクロに目覚めてみようかなと思ったのは、このレンベという海に出会ったからなのだ。

去年もメナド滞在中、数日間レンベを潜り、すっかり虜になってしまった。日本でこの海を有名にしたのが、バンガイカーディナルフィッシュ。ポリスピアというポイントにははっきり行って腐る程いる。

今日潜ったのは、まず『ポリスピア』。バンガイカーディナル狙いではあるのだが、それは浅場に沢山いるので、とりあえず水深20~30m辺りで何か面白いものがいないか探してみることにした。変な生物探しはルターに任せて、僕は去年、あまり観察できなかったハゼとかベラとかに注目してみた。


まずハゼは、ヒレナガネジリンボウの個体数が結構多い他、ブラックシュリンプゴビー、ハチマキダテハゼ、オニハゼ、フタホシタカノハハゼ(黄化個体)、スフィンクスサラサハゼ、フラッグフィンシュリンプゴビーなど。ベラは『フクイ』でも見た、フィラメンテッド、ラボックス(水深15)など。しかし、フィラメンテッドは、フクイの個体より2倍近く大きくて撮影しやすい。しかし、ここでもあまりフラッシングしてくれなくて、あまり良い写真は撮れなかった。

ルターは、あまり変わったものが見つけられなくて、オレンジ色のイザリウオ(拳サイズ)、ウミウシ数種くらいだっただろうか。後はバンガイカーディナルを多少集中して撮影して終わり。あまり成果はあがらなかった。

次に向かったのが『レタックラリー(ラリークラック)』。去年は、ここでクカトゥーフランダーフィッシュ、アンボンスコーピオンフィッシュ、ヒゲハギのペア、エソがニシキテグリを捕食してる珍しいシーンなどに遭遇した。伊豆の大瀬崎の湾内のような砂泥地だ。

今日もクカトゥーフランダーフィッシュとアンボンスコーピオンフィッシュを探してもらうようリクエストし、このポイントに2本潜ることにした。両方とも探すのは結構難しいのだが、とにかく特にもう一度見てみたいのが、その2種だった。

1本目、僕たちの方は特にこれといって見つけられずに終わった。『ポリスピア』同様、個体の大きなフィラメンテッドフラッシャーが水深20mくらいのがれたサンゴのエリアにいて、以外とフラッシングしていたので、それを撮影した以外は、ハゼとかウミウシとかそんな程度だった。

ちょっとがっかりしながら、エキジット。トニーはフランボヤンカトルフィッシュ(ハナイカ)を見つけたと喜んで上がってきた。ボートの上で水面休息しているときに、ルターが他のボートのガイドから、水深2mのガンガゼの密集しているところにヘアリーフロッグフィッシュ(ひげ沢山生えたイザリウオ)がいるという情報を得て、シュノーケリングで探しにいったら、あっさり見つけたので、すぐに撮影に向かった。サイズは25センチくらい。50ミリマクロで1本撮りきり、フィルムを交換して、残タンで別の生物を探すことにした。

最初に見つけたのは、センネンダイの幼魚。1匹は巨大なウニの集団の中にいて、逃げ回るので、撮影できなかったが、もう少し個体の大きな方は、普通に泳いでいたので、簡単に撮影できた。しばらく、ハゼなど撮影していると、ルターがクカトゥーフランダーフィッシュを見つけた。

リクエストしたレアものを見つけてくれたのは、今回これが3度目だ。クカトゥーフランダーフィッシュは一見普通のカレイで、地味だが、ちょっとおどかすとばっと頭の前に、数本の白い触手を広げる。まあ広げたところで、そんなに絵になるっわけではないのだけど...。とにかく、レア物には違いないし、昨年はあまり上手く撮れていなかったので、再度挑戦というところだ。

逃げ回るし、つねに触手を広げているわけではないので、撮影には時間がかかった。僕がエキジットしたときには、すでに5時近かった。しかし、ハナイカが捕食しているシーンを撮りたいと粘っていたトニーは、僕がエキジットしてからも40分以上潜り続け、結局2時間のダイビング。日は山裾にかくて、周囲は暗くなってきていた。ボートに上がってくるなり、嬉しそうに「良い写真が撮れた」と一言。そりゃあ、2時間もハナイカだけに集中していたんだし、皆を遅くまで待たせたんだから、良い写真撮ってもらわなきゃ困るな、と内心思いながら「そう、良かったね」と笑った。

彼の写真集(ウイリアム・タンとの共著)、『サイレントシンフォニー』を見ると、撮影にどれだけ時間をかけているかが良くわかる。粘りのきいたマクロ写真が満載なので、是非見て欲しい。

暗くなった帰路の車の中では、最初だけちょこちょこっと会話があったものの、後は皆メナドにつくまでドロのように眠り続けた。

2004年4月24日(土)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
晴れのち曇り、一時雨、北風

今日もワイド撮影をしようと、準備していたのだが、撮影するには、うす雲がかかっていて、最高のコンディションとは言えない。それでも、NDCでの撮影日が少なくなってきたので、メナドトゥアの浅瀬のサンゴが奇麗なポイントに向かうことになった。

1時間ほどでポイントに到着。去年、一昨年とサンゴの撮影を行ったポイントで、僕ら少数のメンバーの間では通称『タカジポイント』と呼ばれている。午前中は満潮のため、半水面を撮るには水面が高すぎたので、しばらくスノーケリングでベストポイントを探したりして、潮が引くのを待つことにした。

しかし、ここ数日、午後になると陸の方から雲が張り出してきて、天気が崩れる事が多く、今日も同じように時間とともに天気が悪くなってきた。結局ワイド撮影は中止。

で、この日は結局しょうがないので、水深3m程のところにいたスパインチークアネモネフィッシュを撮影しただけだった。他の海で見るよりも、メナドの個体は色がカラフルだ。大きな個体でも、どす黒くならず、結構明るいワインレッドくらいのままでいる個体が多いし、小さい個体の朱色はかなり美しいと思う。時間をかけてフィルム1本撮影してしまった。

潮の引き待ち、日待ちをしている間、船長のアレックスが、船首でココナッツの皮で日をおこし、魚(ハタ)のバーベキューを作ってくれた。まあ、通常のダイビングトリップではあまりしないのだろうし、おそらくヨーロッパ人経営のリゾートではあり得ない事なのだが、船の上で食べる、焼き立ての海魚は最高においしかった。

2004年4月23日(金)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
晴れところにより薄曇り、のち曇り一時雨。

今日こそは、メナドトゥア島で浅場のワイド撮影をしようと思ったが、メナドトゥア島周辺にうす雲がかかっていたので、急きょ変更して『ポポ2』に向かう事にした。前回は黄色のレノピアス(ボロカサゴ)だったが、どうやらピンクのレノピアスもいるらしいという情報を得たので、もともと天気があまり良くなかったら、そちらに行こうとトニーと決めていた。晴れてはいたのだが、撮影にはイマイチという感じ。今日はせっかく女性スタッフにダイビングの用意までしてもらっていたのに、必要無くなってしまった。「もしショップに残っていたかったら、いいよ」と3人に声をかけたが、3人とも「ショップにいても掃除するだけでつまらないから」ということで、一緒に行くことになった。

「イルカ見つけたら教えてね」と彼女たちに言うと、一番若いノーファが、「イルカ来てほしいんだったら、来て下さいって祈らなきゃ」とか冗談言っていた。今日もベタ凪ぎなので、探しやすそうだ。僕はいつものように屋根の上に乗って、海を見回した。船首のそばに座っていたジェーンとアンジーがインドネシア語の歌を歌いはじめた。いつもはただ静かに海を眺めていただけだけど、たまにはこういうのも悪くはない。

しばらくなんとなく歌を聞きながらぼ~っとしていたら、ハシナガイルカの群れを見つけた。「ドルフィン!」と叫ぶと、皆が船首に集まってきた。ノーファは、「タカ(僕の事)、私がお祈りしていたからよ」と言うと、ジェーンも「私たちが歌を歌ってたからよ」と主張した。少なくとも、イルカに関しての考え方は、日本の女性とかわらないな~と思いつつ、「お祈りも、歌もイルカにはいいんだよ」と両方の肩を取り持っている自分が可笑しかった。

コンディションも悪くないので、しばらくトニーと一緒に撮影してみたが、どうやら半分眠っているらしく、遊ぶ気力は全くないという感じだったので、諦めて再び『ポポ2』に向かった。

前回は減圧を何度も出してしまったので、今回は、まず僕らはボートの上で待機して、ガイドのルターとアニスにレノピアスを探してもらって、見つけてから入ろうということになった。トニーは再度黄色のレノピアスを撮り直したいというので、アニスは黄色、ルターは僕のためにピンクを探すことになった。インドネシア人経営のNDCだから、こういう我がままなダイビングができるのだが、他のヨーロッパ人経営のサービスだと、きっとこんな風にはできないだろう。二人と一緒に、女性3人もエントリーした。エントリーの様子を見る限り、ガイドになれるのはまだ当分先のような気がしたのだが...。

まずアニスが黄色のレノピアスを見つけたので、トニーがエントリー。僕はそれから30分くらい待ったが、ルターはいっこうに上がって来ない。しょうがないので、僕も黄色のレノピアスを撮影に行くことにした。結局ピンクの個体は見つけることができなかった。それにしても、何度潜ってもこのポイントは面白い。水深4m程の海草エリアも、スロープ状の砂泥地も、様々な生物が沢山いて、飽きる事がない。結局今日もこのポイントだけ3本潜った。見れたものは、ニュウドウダテハゼ、フランボヤンカトルフィッシュ(ハナイカ)、コロダイの幼魚、ハダカハオコゼ、黄色のシマヒメヤマノカミ、シマウミスズメ、ウミテング、スフィンクスサラサハゼなどなど。

今日は、トウアカクマノミのコロニーがいくつ見つけられるか数えてみたのだが、4mの海草のエリアでは、10個以上、スロープの砂地でも10個くらいだったので、もっと広範囲に探せばまだまだ見つかりそうだった。

ダイビング途中から雨が振り出し、風も出て来たが、3本目を潜り終えた頃には、雨も風もおさまり、帰路はベタ凪ぎの海を爽快に走り続けた。

写真は僕らと毎日一緒に潜っているNDCスタッフ。
手前3人がダイブマスターを目指す、ノーファ、ジェーン、アンジー(左から)。中央の陽気な男性が、今回、僕のガイド役のルター。
黄色のレノピアス(ボロカサゴ)。
水深4mの海草にいくつもあるトウアカクマノミのコロニー

2004年4月22日(木)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
晴れのち曇り、雨 北東の風

今日はワイドを中心に撮影しようと、モデルのインドネシア人女性3人に一緒に船に乗船してもらって、ブナケンエリアに向かった。モデルといっても、NDCの女性スタッフたちなのだが。この3人、実は今ダイブマスター講習中で、多分来月にはガイドとして一本立ちできるようになるそうだ。来月か再来月くらいにNDCを訪れたら、もしかしたら彼女たちがガイドとしてメナドの海を案内してくれるかもしれない。名前はジェーン、アンジー、ノーファ。インドネシア人の女性ガイドはかなり珍しいのではないだろうか。

とりあえず、今日は浅いサンゴのポイントでスノーケルのモデルをしてもらいたかったので、彼女たちのダイビング機材は船に積んでいなかった。スキル的な事を一番心配していたのだが、素潜りもしっかりできるし、ダイビングもガイドを目指しているのだから問題ないはずだ。...ということを知ったのは、船が出てからだったので、明日か明後日には、ダイビングのモデルも頼むことにした。

しかし、今日は途中から曇って雨まで降ってきたので、せっかく彼女たちに来てもらったが、ワイド撮影は中止。

1本目、リーフのハードコーラルとソフトコーラルがきれいだというので潜った、『シラデン(シラデン島のリーフ)』は、確かにサンゴは元気だけど、あまり絵にならなかったし、ソフトコーラルの色も地味目で撮影意欲が湧かなかった。

最後にはルターと一緒に、浅場のがれ場でボクサークラブ(キンチャクガニ)を探すことにした。石やサンゴをひっくりかえしてみたら、思いのほか沢山見つかったのには驚いた。二人で10匹ほど。一番身体の色がきれいで、イソギンチャクの形が良い個体を選んで撮影した。

2本目はまたまた『フクイ』。今回、僕は再度フラッシャーのベラ狙いで潜ってみた。とにかく5~10mの浅い場所にうじゃうじゃいるのだが、前回同様、なかなかフラッシングしてくれなくて、かなり粘ってみたが、結局良い写真は撮れなかった。時間帯が悪いのか、時期的なものなのか...。タイのスリン島でe-diveのスタッフに見せてもらった、マッコスカーズのコロニーでは、若い雄たちが固まって、ひっきりなしにフラッシングしていたのに比べると、あまりにもフラッシングしなさすぎる。これはいつ来れば激しくフラッシングするのか、鈴木大介君に調べておいてもらいたいものだ。

モデル役の女性たちは、やることもないので、皆僕が撮影している上でスノーケリングして遊んでいた。スキンダイビングもちゃんとできていたので、水中モデルとしては大丈夫そうだった。

食事の後、増々天気が悪くなり、風も強くなってきたので、NDC近くの『鈴木ポイント』まで戻ってダイビングすることにした。前回透明度がかなり悪くて見れなかった巨大なハゼは、今回は嫌と言う程見せてもらった。それにしてもでかい。40cm以上ありそうだ。オバケインコハゼやリボンゴビー、ニュウドウダテハゼの比ではない。でも地味だけど。図鑑で調べたけど、記載されていなかった。

他に撮影したのは、トゲヨウジ、ハダカハオコゼ、ハナヒゲウツボの老生魚、イシモチ、テンジクダイ系数種。そうそう、ケラマハナダイが水深4mで小さなコロニーを作っていた。日本だと奄美大島でかなり浅い場所で見られるが、これほど浅くはなかったと思う。

結局今日もマクロ撮影に終止してしまった。

2004年4月21日(水)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
朝、快晴、ベタ凪ぎ。午後から曇り一時雨、北風。

今日は、黄色いレノピアス(ボロカサゴ)がいるかもしれないとルターが言うので、NDCからメナド湾の対岸にあるポイントまで行くことにした。ポイント名は『ポポ2』。僕も初めて潜るポイントだ。NDCからはスピードの出るボートで1時間15分ほど、メナドの町を左、ブナケンナショナルパークのメナドトゥア島、ブナケン島を右に見ながら、メナド湾を南下したところにある。

何かの地図で見た記憶があるのだが、このメナド湾からもう少し南に下った場所は、ジュゴンの目撃情報が頻繁にあるところのようだった。『ポポ2』も、浅瀬はジュゴンが好みそうな、黄緑色の海草が海底一面に敷き詰められていて、清涼感を感じさせてくれる。スロープの途中、水深8mくらいから、海草が無くなり、灰色の砂地が広がるすり鉢状のスロープに変わる。どことなく、日本の大瀬崎の湾内とか、こちらのポイントだと、レンベに似ている。

レノピアスは浅いところにいることもあれば、30mくらいにいることもあるというので、とにかく、全員で探しまくった。最初に向かった小さな根は33m。フタイロハナゴイなどが群れていた。しかし、レノピアスは見当たらなかったので、すぐに移動して、砂地に点々とする別の根や、沈められた小さな魚礁、ブイを固定するための土のうの固まりなどを探しまわった末、そろそろ減圧が出そうというときになって、一つの魚礁で、ルターが1匹のレノピアスを発見した。しかし、黄色いと言っていた割には、結構茶色くて地味だった。「あんまり絵にならないかな」と考えていたら、ルターがさらに別の魚礁で2匹のレノピアスを見つけた。その内の1匹が、カラフルな黄色の個体だった。「でかした!」とばかりに、二人して水中で握手を交わし、彼の肩をポンとたたいてやった。「ヒポカンプスポントヒに続き2度目のヒットだな」と思いながら、撮影。水深は28m、結局11分程減圧を出してしまったが、撮影を済ませてゆっくりと浮上した。浅瀬の海草のエリアで減圧停止しながら、海底を見てみると、さっきはリノピアスの事しか頭になくて、見過ごしていたが、結構色々な生物がいて面白かった。特に海草に囲まれたイソギンチャクの中にトウアカクマノミが生息していて、卵も生んでいるものもいた。そのイソギンチャクとトウアカクマノミのコロニーの数が半端なく多い。それに浅い。浅いものは水深3~4mからあるのには驚いた。ワイドで撮影しても周囲が黄緑色の海草だから絵になる。このコロニーの数は、タイのタオ島のダイビングサービス、ビッグブルーのあるサイリービーチにあるコロニーより数が多いのではないだろうか。今度タオに行ったら教えてあげよう。

結局このポイントが面白かったので、今日は3本とも同じポイントに潜った。他にも、砂地では、レアもののゼブラバットフィッシュの幼魚2匹や、ニシキフウライウオ、オレンジ色の体長1cm程のイザリウオ、シマウミスズメ、オオウミウマ、ホシテンス、コロダイの幼魚、ウミウシ数種などを発見。海草の上でも、イカやカマスの群れ、海草の中のイソギンチャクに群れるテンジクダイ、ウミテング、ヘコアユの群れ、ワニゴチなどなど。とにかく、探せば探すほど何か出てきそうで面白いし、黄緑色の海草の清涼感がなかなか熱帯の海っぽくなくて、涼しげな印象なのが良い。

トニーも僕もこのポイントがかなり気に入った。滞在中、もう一度くらい来てみたい。ちなみに、海草の中にジュゴンが海草を食べた跡、ジュゴントレイルを探してみたが、それらしきものは見つからなかった。やはりこのポイントは、人が住む海岸から近過ぎるのだろうか。

帰路、ちょっと天気が崩れて、海に山の方から雨雲がはり出してきていた。船の前方は雨が降っていて、真ん中にずっと虹が見えていた。そこにハシナガイルカの群れがやってきたので、トニーは慌てて撮影を始めた。しかし、この前ほどバウについて遊んでくれないし、数も少なくて、多少波もあるので、撮影はちょっと難しかったようだ。

本当は良くない事だけど、今日は僕もトニーも3本とも減圧を出したりしたので、疲れてしまった。明日はなるべく浅いポイントに潜ろう。あるいは半水面とか...。

2004年4月20日(火)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
快晴、ベタ凪ぎ、午後所により曇り、小雨。

今日からシンガポール在住のカメラマン、トニー・ウーと一緒に潜ることになる。彼は昨年僕がNDCに滞在していたときも、しばらく一緒にいてダイビングをした。そういえば1年前の今頃と言えば、ちょうどSARSが世界中に席巻していて、どこも観光客がいなくなり閑古鳥が鳴いていた頃だった。

昨日の事を話すと、トニーはイルカを撮りたいというので、今日もブナケンナショナルパークエリアに向かうことにした。1本目に潜ったのは、『レクアン1』。レクアン2ほどドロップオフが急ではなく、エントリーポイントは多少急なサンゴとがれ場のスロープ状で、水深30Mくらいで砂地の傾斜になっている。トニーはガイドにアニス、カメラ持ちのアシスタントにジャッキーというDM二人をつけて潜った。NDCは、ゲストが少ない時には、こういうリクエストもできるのがフォト派には嬉しい。もちろんチップは二人分渡さなければいけないけど。

僕はいつものようにルターと一緒に潜った。エントリーの時点でトニーと僕は、すぐにばらばらになって、お互いがそれぞれガイドに被写体を探してもらった。

僕はちょっとリサーチも兼ねて、水深35mくらいまで潜ってみた。するとサンゴのがれ場にフラッシャーのベラのコロニーを見つけた。「結構いるな、でも深すぎる」と思い、ちょっとだけ観察して少しずつ深度を上げた。水深30m付近では、数匹のアケボノハゼ、15m前後の壁の窪みにはニチリンダテハゼが結構生息していた。しばらく流していたら、水深20m付近でミズタマイソギンチャクの中にオランウータンクラブを発見。「最初は2匹いる」と思ったが、よくよく探すと、なんと一つのイソギンチャクに6匹のオランウータンクラブが生息していた。寄せて一緒に撮影しようとも思ったが、すでにフィルムが無くなっていた。後は、『レクアン2』のような垂直な壁が続く。昨日も思ったのだが、ブルーウォーターを潜るよりも、垂直に落ち込む、底の見えない壁の脇を泳いでいる方が、宙に浮いてる感じがして、なんとなく下半身がくすぐったくなる。おまけに、ここの海は1000mくらいまで一気に落ち込んでいるというのだから、想
像するだけで緊張する。エキジットしてから、「水深35mくらいでフラッシャーのベラを見つけたと」ガイドたちに言い図鑑を見せると、「この魚なら5mくらいの浅いところで見たことあるよ」と言われてしまった。「どこのポイント?」と聞くと「どこだか忘れた」と返事が返ってきた。まあ、多少マニアックだから、あまりお客さんは興味ないのかもしれない。

2本目は昨日と同じ『フクイポイント』に潜ることにした。もちろんトニーはヒポカンプスポントヒ狙い。途中、イルカを探したが、今日は見つからなかった。エントリーしてトニーはすぐに水深18mほどのポントヒのポイントへ。僕はそこからサンゴとがれ場のスロープをまた30mくらいまで降りて行った。ちょっと離れたところをイソマグロ15匹程の群れが移動していった。ゆっくり浮上すると、すでにポントヒは見つかったらしく、トニーは撮影を始めていたので、僕とルターはまた適当に移動を始めた。昨日よりも根を大回りをして、エントリーポイントにUターンするコースを取った。水深15~30mの緩やかな砂地とがれ場のスロープにスパゲティーイールの群生地があった。その周囲をブラックチップシャークが泳ぎ去るのが見えた。根のトップ、水深5~8mの所に移動すると、昨日同様、ナンヨウツバメウオ、ロウニンアジ、トサカハギが群れているポイントの下で黄色のイッシキフウライウオを少しだけ撮影して、のんびり船のところまで戻ったら、そこに昨日は姿を見せなかったナポレオンがやってきていた。

このナポレン、いつも微妙に難しい距離を保ちつつ泳ぐのが憎らしい。フィッシュアイレンズで撮影するには無理がある距離なのだ。ある意味カメラマン泣かせだ。どうせ上手く撮れないのなら、いっそのこと近付いてくれない方が良いと思ったりもする。パラオのブルーコーナーや、モルジブのフィッシュヘッドのナポレオンの人なつっこさを見習って欲しい。

まだ、マクロのフィルムが残っていたので、船の下のがれ場のベラを観察してみることにした。すると、良くみると、なんとそこにフィラメンテッドフラッシャー、ピンクフラッシャー(多分2種ともいたと思う)がいるではないか。びっくり!しかもかなりの群れだ。パラオでは、ジャーマンチャネルの水深15~20mのところにコロニーがあって、減圧と戦いながら一生懸命撮影していたのに、ここは水深8mくらいからうじゃうじゃいるのだ。「どこか忘れたなんて、こんなところにこんなにいるじゃないか!」と興奮して残りにフィルムを撮りきった。今度はこのフラッシャーだけ目当てに潜りにきてもいいな。どうしてもっと早く気付かなかったんだろう。

ここには他にもクロヘリイトヒキベラや数種のベラがいて、特にオレンジと白、黄色、ピンクに黒の模様が美しいラボックスラスも、フラッシャー同様お勧めだ。

ランチの後、3本目は、またドロップオフのポイント、『デパンカンプン』に潜った。一昨年はここでジュゴンの親子に遭遇しているので、それからというの、ここに潜るときは結構ドキドキしながら潜っている。しかし、今回は巨大なアオウミガメを3匹見ただけで、スペシャルな大物には出会えなかった。マクロは特にこれというものも無く、適当に魚を数種撮影した。ちなみに撮影したのは、シマヤッコ、ナメラヤッコ、ルリヤッコ、イナズマヤッコ、ニシキヤッコ、イエローベリーダムゼル、カスミチョウチョウウオ、フエヤッコダイ、イッテンチョウチョウウオ、オウギチョウチョウウオ、アミチョウチョウウオ、レモンチョウチョウウオフタスジヒメジ、アオマスク、ヒレボシミノカサゴなど。

以前NDCでガイドしていて、今はマーシャルでガイドをしている島本剛君が、ルターにあげたモTROPICAL REEF-FISHES OF THE WESTERN PACIFIC INDONESIA ANDADJACENT WATERSモという魚のガイドブックを借りたので、今日から魚の名前が結構ちゃんと書けるようになった。勉強熱心な剛君は、ちゃんと日本名を書いてくれていたので、本当に助かった。よっぽど何度も見ていたのだろう、本そのものは表紙もはがれて、ボロボロではあるけど。

帰路もイルカを探しながら帰ったが、結局今日は出会えなかった。僕の前に1週間程来ていた人はイルカが見たくて来たのに、まったく会えなかったというから、昨日の群れに遭遇できたのはかなりラッキーだったのだろうか。しかし、去年、一昨年も僕はジュゴン、ハシナガイルカ、オルカ、オキゴンドウ、ユメゴンドウなどの海洋ほ乳類に遭遇しているから、チャンスが無いわけではないはずだ。

2004年4月19日(月)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
快晴、ベタ凪ぎ。今日も朝から暑い。今日は、ブナケンナショナルパークエリアのポイントで潜る事にした。1本目は『フクイポイント』。緩やかなサンゴのスロープのポイントで、ビギナーからでも楽しめる。ダイバー慣れしたナポレオンと水深20m程に並べられた巨大なシャコガイで有名なポイントだ。それ以外にも、浅場にロウニンアジやツバメウオなどが群れていて、個人的にはワイド系がお勧めのポイントだ。しかし、今回の目的は、ヒポカンプスポントヒ。一昨年、新種として発見された、ピグミーシーホースの仲間だ。

体調は海藻に巻き付ける尾の部分を伸ばしても2cmくらい。去年もフクイポイントの隣の『アランバヌア』というポイントで、ガイドに必死になって探して、やっと見つけてもらって撮影した。だから、今回も探すのに時間がかかるだろうと思っていたのだが、ポントヒがいる場所に着くと、ガイドのルターはものの10秒で見つけてしまった。はっきり言って驚いた。どう考えてもいくらいる場所がわかっていても、そう簡単に見つかる代物では無いのだ。

でもこちらとしては、多少時間がかかる事も覚悟していたので、すごくラッキーだった。昨日、リクエストしたものをまったく見せてもらえなかった事は、今回の事で全て帳消しかな。去年見たヒポカンプスポントヒは白い色をしていたが、今回の個体は緑がかった黄色って感じの色だった。とにかく、ここでは、この撮影に集中した。途中、他のダイブショップの一団が近付いてきたが、何を撮影しているのか気付かなかったようだ。こんなに小さかったら当たり前だけど。

ここでは、他に、ツバメウオ、ロウニンアジの群れ、パープルビューティーが群れる浅場のサンゴや、黄色のイッシキフウライウオなども撮影。巨大ナポレオンは今日は姿を見せなかった。今までで初めての事だ。

2本目を潜る前に、ブナケン島に上陸して、エントランスフィー150、000ルピアを支払った。これは、このナショナルパークの保護、管理、施設の改善などに使われるそうだ。本当だろうか...?

移動の途中でハシナガイルカの群れに遭遇。数は50は下らない。もしかしたら100以上だったかも。しばらく、ボートをイルカの群れに接近させて、バウ(船首)について泳ぐイルカたちを撮影させてもらった。ベタ凪ぎだったので、水中にいるイルカの姿がはっきり見えて、撮影しやすかった。ルターも、ボートキャプテンのアマンも大喜びで海中を覗き込んでいた。

2本目は『レクアン2』。深海まで落ち込む垂直なドロップオフポイント。壁沿いに、カスミチョウチョウウオ、ムレハタタテダイ、フィリピンスズメダイ(?)、ハナダイなどが群れて、宇宙遊泳しているみたいな浮遊感を楽しめる。しかし、今回、このポイントでも狙いはマクロ。オランウータンクラブなどの甲殻類を中心に撮影。リーフトップに上がってからは、マダラタルミ、ロウニンアジ、ツバメウオ、それにヤガラの群れなどを撮影してエキジットした。

食事の後、ブナケンエリアから、移動。3本目にホテルサンティカメナド沖の『タンジュンピソック』に潜った。ここも去年潜った時よりもサンゴが一段と成長している印象を受けた。5~10mの浅いリーフ上は、足の踏み場もないくらいに様々なサンゴに埋め尽くされていた。撮影自体は特にこれというものは無かったが、黄色いイソバナにクダゴンベが住み着いていて、ちょっと色目が面白そうだったので、それを時間かけて撮影してみた。

2004年4月18日(日)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
快晴、ほとんど無風。今日はマクロ撮影に集中したかったので、ブナケンまで行かずにNDC近くのメナド湾内のポイントを3本潜った。メナド湾エリアは、ブナケンエリアと違って、透明度が良いわけでは無いのだが、マクロ生物の宝庫でもある。NDCに滞在すると、決まってマクロ撮影はこの辺のポイントをリクエストする事が多い。ガイドはルター。陽気で、船上でも僕にとって、適度に話しかけてくれるので、気が楽だ。

1本目は『ブッラックロック』。NDCからはボートで10分くらい。緩やかなスロープ状の地形に、サンゴの根が密集している。去年潜っていたときより、サンゴがかなり成長した印象を受ける。去年まで、取材のためのマクロ探しにあまり自信が無いと言っていたルターだが、今回は次から次へと被写体を見つけてくれた。先日、水深9m付近で卵を口内飼育しているジョーフィッシュを見つけたというので、行ってみた。ジョーフィッシュは沢山いたが、卵を抱えている個体はいなかった。「水深20mオーバーの根にはゴーストパイプフィッシュがいる」というので、行ってみた。しばらく探したが、それもいなかった。潜水時間は90分。次ぎに潜ったのは、NDCから15分ほどの『メラス』。去年はここの水深20m付近のイソバナにピグミーが生息していた。今回も探してもらったが、見つからなかった。「以前、ここでフリソデエビを見つけた事がある」とルターが言うので、それも探してもらったが、こちらも見つからなかった。2本目も潜水時間90分。

3本目は、彼らが、今NDCにいる日本人ガイドの鈴木大介君の名前を取って、『鈴木ポイント』と呼ぶ、バラクーダリゾートの目の前のゆるい傾斜の続く砂地とサンゴの根が点在するポイント。水深10mくらいには車が沈んでいて、ケラマハナダイやムレハタタテダイ、ミノカサゴなどが群れている。以前は潜っていなかったが、鈴木君が好んで潜るようになったとか。「他に何がいるの?」とルターに聞くと、「大きくて地味なハゼ、それに前は黄色いイザリウオも見つけたことがある」ということで、探してもらったが、結局両方とも見れなかった。3本目も結局90分。

とここで読み返すと、マクロ探しが上手くなったと前置きしておきながら、まったく何も見せられていないように感じるかもしれないが、決してそういうわけではなくて、それ以外の被写体は十二分に探してくれた。

ここで、見せてもらった生物で、記憶に残っているものだけ列記しておく。魚の図鑑も無く、マクロ苦手で、乏しい知識しかないので、情報があいまいだが、あしからず。

ブラックロック:甲殻類各種(甲殻類の名前はさっぱりわかりません)、ハチマキダテハゼ、黄色いハダカハオコゼ4匹、ジョーフィッシュ、コウイカ、カクレクマノミ

メラス:甲殻類各種、ピンクスクワットロブスター、ガラスハゼ(他の場所よりサイズが大きい)、ウミウシ各種、トウアカクマノミのコロニー、カミソリウオ3匹、コウイカ2匹

鈴木ポイント:タツノオトシゴ、ケラマハナダイ、セミホウボウ、ハダカハオコゼ3匹、ヘコアユの群れ、マダラタルミの幼魚、ベニハゼ、カスリハゼ、ブラックシュリンプゴビーなど泥ハゼ系各種。 ...潜った直後にログ付けとかしないから、ほとんど忘れてしまった。明日からはちゃんと付けるようにしよう。まあ付けたところで図鑑も無いし、あまり変わらないと思うけど。

そうそう、ガイドの鈴木大介君は、今日本に帰っていて、5月までこちらに戻って来ないので、僕はすれ違いになる。毎回すれ違いなので、一度お会いしたいのだが...、それに彼が持ってるであろう魚の図鑑にも期待しているので、できれば今月戻ってきて欲しかった..。

再度オルカの話しをルターに聞いたところ、なんとNDCのすぐ沖に出没したそうだ。彼もそのときボートに乗っていたというので、「誰か水中に入ったの?」と聞くと「いや、入ってない。危ないよ」という答えが返ってきた。昨日誰かが飛び込んで撮影したと聞いたのは、ガセネタだったようだ。

2004年4月17日(土)
メナドのダイビングレポート(写真家・越智隆治)
今日から、5/3まで、インドネシアのメナドに滞在して撮影を行う。去年も同じ時期に1ヶ月程メナドに滞在して撮影を行った。今回は、4/28まで老舗のダイビングリゾート、NDC(ヌサンタラダイビングセンター)に滞在し、その後、タラサダイビングセンター(ホテルサンティカメナド内)の所有するダイビングクルーズ船、ミンピ号に乗船して、メナドの北に連なるサンギヘ諸島でのダイビングを体験する予定だ。

海のコンディションは昨年同様、今のところ良いらしい。今日のところは、ダイビングはしないで、明日にそなえて準備をするだけで、特筆すべき事は無いのだが、トピックスを二つほど。

まず、インドネシア入国に際して、ビザの取得が必要となったのはご存じだろうか?僕も出発直前まで知らなかった(去年の同じ時期には必要無かった)ので、日本で取得しないとだめなのかと一瞬あせったが、インドネシアの空港に到着してからでも取得できるので、ご心配なく。ちなみに料金はUS$25(30日以内の滞在の場合/3日以内ならUS$10)。メナド空港では、入国手続きの前に、ビザを購入する窓口があって、そこで購入してから入国することになる。僕はUS$で購入したが、日本円でも購入は可能。もちろんインドネシアルピアでも可能だ。「VISA on arrival」の表示に従っていけば問題は無い。空港自体、そんなに大きくないから、迷っても誰かに聞けばすぐにわかるだろう。

2つ目は、NDCの敷地内に、現在新たなコテージ3棟が建設中で、5月には完成するらしい。今までNDCに来た事がある人ならご存じと思うが、このリゾートは古いので、施設がかなり老朽化している。そんな中で、少しずつだが(本当にス少しずつだけど)、改築が進んでいるようだ。ちなみに、フロントも、多少こぎれいになった。まあ、ホテルサンティカメナドに比べたら(比べるのが間違ってるけどさ..)、格段に施設はぼろいけど、僕はこのリゾートのアットホームさが好きだ。

まあ、今日はそんなところだろうか。あ、もう一つ、先週NDCのお客さんが、ブナケン周辺でシャチのポッド(群れ)に遭遇、スキンで水中に入って撮影に成功したそうだ。何人かいるなかで、水中に入ったのは一人だけらしいけど。僕も去年、サンギヘ諸島へのクルーズ途中でポッドに遭遇したが、水中には入れなかった。また実際にそういうシーンに遭遇したら、迷わず水中に入れるかどうか疑問だけど..。でもできることなら水中で撮影してみたいな。


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