一緒に暮らそう
2012年3月13日(火)
海”というと穏やかで、青く美しい海を想像しがちですが、生物が生き残るためには大変厳しい環境でもあります。そのため水中生物達は、生き残るために異なったテクニックを持っています。棘や毒を持つ種や、硬い骨格や殻または華やかな色を持つ種など様々です。それでは、一緒にどんな技を持っているのか見ていきましょう!
写真提供:ワカトビゲスト Steve Miller
他の動物または植物と共生共存している種や、同じ種から生き残るための方法を受け継いだ種、そしてまだ特別な防御方法を持たない生物もいます。例えば、イソギンチャクに住むクマノミはこのひとつです。
イソギンチャクは自分の棘から身を守るため、触手の根元が粘液で覆われているという事をご存知でしたか? そのため、イソギンチャクと一緒に住むクマノミも棘に刺されないよう、繰り返し自分の体に粘液を擦りつけ生活を共にしているのです!
写真提供:ワカトビゲスト Frank Owens
ウミシダとバサラカクレエビもまた、生活を共にする関係にあります。小さいので見つけるのに苦労しますが、ウミシダと同じ色をして、上手にカモフラージュしている美しいエビです。
ウミシダまたはウミユリは、バサラカクレエビ以外の生物の宿主でもあるので、引き続きご案内していきましょう!
ウミシダの下側を見てみるとコマチコシオリエビが、そして内側をチェックしてみるとウバウオを見つけることができます。時には、ひとつのウミシダに3種類全員が集合していることもあるので、是非チェックしてみてください!
この小さな生物たちは宿主のウミシダを、隠れ場所にしたり、移動に使ったり、餌を見つけるために使ったりと、上手に主人を使いこなし共生しているのです。
写真提供:ワカトビゲスト Eric Cheng
ウミシダは、羽のような腕に囲まれた中央部分に口を持っています。U字型の腸を持ち、口の隣に肛門があります。そして、多数の羽のような腕を使い、水中の有機物を捕らえ餌としています。管足の部分は粘着性粘液で覆われており、餌になるものを捕らえると、口に運んでいきます。
写真提供:ワカトビゲスト Richard Smith
では別の生物を紹介していきましょう。
イソコンペイトウガニは、トサカ(ソフトコーラル)に住む擬態上手で美しいカニです。この小さいカニには隠れる場所があまり無いため、ポリプや小さな枝を自分の甲羅に植えつけたり、枝を自分の体に引っ張り寄せその陰に隠れたりしているため、見事に擬態できる訳です!!
写真提供:ワカトビゲスト Eric Cheng
イソコンペイトウガニのスーパー・マクロショットです。細かい所までよく見えるでしょ!?
写真提供:ワカトビゲスト Eric Cheng
このムチカラマツに住むムチカラマツエビのように、共生している動物達はカモフラージュするために、宿主と同じような色をしている事がほとんどです!
ムチカラマツエビは、全長1cmほどの小さなエビです!!
写真提供:ワカトビゲスト Richard Smith
イソギンチャクもまた、様々な生物に隠れ場所を提供しています。
イソギンチャクが持つ刺胞により他の生物を寄せ付けないため、そこに住むある一定の生物にとっては保護された場所となります。アカホシカニダマシもまた宿主であるイソギンチャクの中で快適に生活するカニの一種です。
写真提供:ワカトビゲスト Doug Richardson
コールマンシュリンプもまた毒を持つイイジマフクロウニと共生するエビです。
ご覧の通り美しいエビなのでフォトグラファーにはもってこいの被写体ですが、彼らは毒のある棘の間で安全な場所を見つけながら行動しているので、むやみに移動させたりしないでくださいね!
写真提供:ワカトビゲスト Saskia van Wijk
ナデシコカクレエビもまたイソギンチャクをホストとし、外敵から身を守っています。
写真提供:ワカトビゲスト Eric Cheng
特別な防御テクニックを全く持たない生物は、他の生物と共生するための関係を作り出したり、同じ種から行き残る術を教えてもらったり、もしくは毎日生きていく過程で学んでいかなくてはなりません。
写真提供:ワカトビゲスト Janice McLaughlin
海綿の表面には小孔と呼ばれる数多くの孔があり、そこから多くの水を取り込んで有機物を取り出し餌としています。そして上部には、大孔と呼ばれる開口部があり、そこから水を吐き出しています。
小さい穴がたくさんあるため、ハゼなどの小さい生物の隠れ場所にもなっています。
写真提供:ワカトビゲスト Martin Heyn
多様なサンゴ礁が広がることで知られるワカトビでは、巨大で様々な形の海綿がたくさん見られます。そんな大きな海綿を隠れ家にするピンクスクワットロブスター(ヘアリースクワットロブスター)は、小さな隙間で生活しています!
写真提供:ワカトビゲスト Robin Y. Smith
ヒッチハイク上手なコバンザメは、吸盤状で小判型に変形した大きな背びれを持っています。この吸盤を使い、サメやエイなどの大型魚やアオウミガメなどに吸い付き、餌のおこぼれや寄生虫を食べながら生活しています。
写真提供:ワカトビゲスト Frank Owens
浅瀬で集合し一緒に移動しながら、捕食や産卵、休息を共にする行動を上手に撮った一枚です。まとまって泳ぐことにより敵から身を守ることにもつながります。
写真提供:ワカトビゲスト J. Watt
ゴンズイは背びれに毒の棘を持ち、相手に深刻な傷を負わせることができます。そして防御のために、毒の量を調節することもできるそうです。
普段は群れで行動していますが、繁殖期になるとペアで行動し始めます
写真提供:ワカトビゲスト J. Watt
ハゼと共生するテッポウエビ。この2匹の関係は、危険が迫ると視力が弱いエビにハゼが警告する仕組みになっていて、エビは彼らの穴を掃除している時も、二つの触角のいずれかを穴の入口にいるハゼに接触させ、合図を待っています。
危険が迫った時は、ハゼは尾ビレを動かしてエビに合図を送るか、自ら穴に逃げ込むと、テッポウエビもハゼに続き穴に逃げ込みます。巣穴の中でもエビの触角はハゼに触れていて、様子をうかがっているそうです。
このハゼとエビの小さなカップルは、サンゴ礁斜面の砂底や礫混じりの砂底で見られることが多く、お互い生き残るために助け合いながら生活しています。
エビはとても視力が悪いですが、一生懸命穴を掃除する働き者です。エビは避難場所であり、ハゼと住んでいる穴をキレイに保とうと、休むことなく一日中働き続けます。そして相方のハゼはというと、エビが掃除をしている間、外敵から身を守る穴の監視役を勤めるという、両者には完璧な役割分担が存在するのです!
写真提供:ワカトビゲスト Doug Richardson
いつ見かけても、テッポウエビは忙しそうに掃除をしているのにもかかわらず、ハゼは穴の手前でただ座っているだけのように見えるので、楽をしているように見えますが、ハゼはハゼの役割を果たしていたのですね!
私達が心配することではなかったようです。
写真提供:ワカトビゲスト Paul Brazier