藻類の中で生活する生き物たち

2012年7月31日(火)

バンダ海の栄養豊富な水が流れ込むWakatobiのサンゴ礁には、‘Halimeda’ という海藻もたくさん生育しています。このハリメダは、多くの異なった魅力的な生き物にとって最適な生息地です。

それでは、この海藻の中にどんな生き物がいるのか見てみましょう。

絶滅の危機に瀕しているハリメダという藻は、微細藻類の緑色植物門に属し、栄養分の豊富なサンゴ礁の生態系の中で、豊富に育っています。

最近になって、ハリメダは熱帯のサンゴ礁を形成する最初の生命体であることが判明し、今まで信じられてきたイシサンゴがサンゴ礁を形成していたという概念は消え去ってしまいました。グレートバリアリーフで行われた調査では、広大なハリメダ地帯では、毎年1平方メートル当り2kgの炭酸カルシウムが作り出されている事が示されました。

藻類の体(葉状体)は、石灰化した緑色の断片で構成されており、最も興味深い特徴としては、急速に成長することと、炭酸カルシウムがその組織に沈殿しているため、ほとんどの草食動物は食べられないことが挙げられます。

ハネモ目(海藻:order Bryopsidale)などの海藻は、個々の組織が2つ以上の核を持つ細胞で構成されています。海藻全体は、個々の海藻から海底にひろがる根でつながっていると考えられています。現在、約30種類のハリメダが見つかっており、その他には化石記録からのみ判明したものが追加でいくつか存在するのみなのです。



ハリメダは、砂地から岩礁エリアの海洋生物の生息範囲に繁殖しており、最大150mの水深で発見されたとの報告もありますが、このような光合成に必要な太陽光がほとんど届かない水深で繁殖する能力は、いくつか他の光合成組織と共有して形質を進化させたことを示しています。


写真提供:ワカトビゲスト Steve Miller

ハダカハオコゼやその類似種は、ハリメダの寝床に隠れることを好みます。

ハダカハオコゼの体色は緑、赤、白、黄色と多様に変化し長時間ハリメダに隠れていると、彼らは黄緑色に変化する事ができるようです。ハダカハオコゼは、名前の通り葉に模倣するのがとても得意であり、実際左右にゆらゆら揺れ動くことで、この擬態をより高度にしています。

また、彼らの皮膚にはよく染みが見受けられ、これがカモフラージュ効果をより高めています。ときには、本物の藻類やヒドロ虫を、口の周りに付けて、いるものも見られます。ハダカハオコゼは、彼らの獲物から見つけられないないようにカモフラージュをして、待ち伏せている捕食者なのです。


写真提供:ワカトビゲスト Eric Cheng

ハリメダ ゴーストパイプフィッシュ(Solenostomus halimeda)は、その名前が示すように、サンゴ藻類のハリメダ付近でのみ発見され、緑もしくはグレーや白っぽい体色をしています。

彼らの体長が小さい上に、棲家の色や形を完璧に模倣する素晴らしい能力を持っているため、これらの素晴らしく魅力的な魚を見つけるためには鋭い視力が必要です。

ハリメダ ゴーストパイプフィシュはカミソリウオの中でも小さな種類であり、雌はたったの70mmまでしか成長しません。


写真提供:ワカトビゲスト Richard Smith

カサゴ科の仲間は毒棘を持っていて、捕食者に不快な痛みを与えることができます。また、彼らは皮膚から粘液を分泌することで、寄生虫や感染症に対する保護をしたりしています。粘液は魚の一般的な分泌物であり、ある種類の魚はその粘液の中に毒素を含んで放出します。これにより、敵の攻撃を避けることができる他に、彼らの幼魚に餌を上げる際に使用されることもあります。

ハダカオコゼは、太陽光が十分に届くような浅瀬で見つけることができ、ダイバーは十分近くまで接近することができます。彼らの持つ体色の多様性は、特にフォトグラファーを喜ばせてくれます。


写真提供:ワカトビゲスト Doug Richardson

カミソリウオは、水中や水底の周辺に生息している小さなエビなどの甲殻類を餌にしています。彼らは、頭を下にした状態で通常泳いでいるため、捕食をしている姿を目にすることは簡単です。静かに近づいて見てみると、長い鼻先にある口から、獲物を吸い上げています。

類似のタツノオトシゴとは違って、卵を孵化させるのは、メスのカミソリウオです。育児嚢は発達した腹ビレで構成されており、上縁に沿って小さな腹側体棘を一緒に留めています。いくつかのケースでは、一匹のメスと二匹のオスで生活をしており、孵化数日前であっても、オスによる卵への受精は一定のペースで行われています。

生まれてから幼生期までは急速に成長して泳ぎはじめ、プランクトンの中で長い浮遊期に入ります。彼らの魅力的な振る舞いや擬態技は、ダイバーやフォトグラファーにとても人気があります。


写真提供:ワカトビゲスト Antonio Rosso

ハリメダは、ウミウシにとっても魅力的な生息地です。

すべてのウミウシは肉食動物であり、カイメン、ヒドロ虫、コケムシ、フジツボ、イソギンチャクなどを餌にしており、中には仲間のウミウシやその卵を食べるウミウシもいます。ハリメダは食べられないので、ウミウシもハリメダを餌にはしません。ウミウシにとって、ハリメダはいくつもの隠れる場所を提供してくれる絶好の隠れ場所です。いくつかのウミウシは、このハリメダのなかで上手に擬態をしている種もいます。



安全上の理由から、多くのウミウシは海藻の上にリボン状の卵を産み付けます。このリボン状の卵はきれいな色で配列されており、いくつかは単調でくすんだものもありますが、とても綺麗なものもあります!

とても多くの小さな卵がきれいに配列され、その数はそれぞれのリボンで異なりますが、最大で数千個にのぼります。ほとんどの種類のウミウシは、卵の産み付けが終わると立ち去ってしまいます。しかしながら、これらリボン状の卵の多くは、非常に脆弱なかたちで晒されているのにも関わらず、捕食者から攻撃されたり、食べられてしまうことはほとんどありません。唯一知られている捕食者は、他のウミウシなのです!



ワニゴチは、名前の通りワニのような面白い容姿をしています。彼らは、コチ科に属しており、あまり似てはいませんがカサゴ科に属している人気のミノカサゴの親戚にあたります。

ワニゴチは、快適なハリメダの上に横たわるのが好きで、ハリメダの中に上手く紛れ込んで擬態をしています。他の多くの魚のように、彼らも周囲に溶け込むようにすばやく体色を変えることができます。この変装の達人であるワニゴチが、50cm以上の長さに達する場合でも、以外と見つけるのに困難します。

彼らは、完璧な擬態で獲物を待ち伏せし、小さな魚などを狙っているのです!


写真提供:ワカトビゲスト Remo Michel

ワカトビダイブリゾートでは、継続的に広範囲のサンゴ礁を保護することで、小さくて希少なピグミーシーホースのみならず、他の多くの種類の個体が、汚されていない自然のままの環境に近い海の中で、繁殖の機会を得ていると評価されています。



彼らは、瞼の代わりに、目の上に多肉質の‘垂れひだ’を持っており、これにより、虹彩の輪郭を失くし、カモフラージュを向上させています。ワニゴチの幼魚は、黒色の体色をしています。

彼らは臆病者ではないため、ゆっくりと近づけばとても接近できるため、フォトグラファーからも人気が高いです。もしらしたら、誰からも自分が見えるはずがない、と思っているのかもしれません。このワニゴチの大胆さのおかげで、体全体や顔と背景を捉えた素晴らしい広角レンズでの撮影を可能にしてくれます。また、美しい詳細な眼のクローズアップなどのマクロ撮影を行うチャンスも与えてくれます。


写真提供:ワカトビゲスト Remo Michel

Wakatobiのハリメダ地帯で見つけることができるその他の隠れた種としては、ホワイトピグミーシーホースと呼ばれる‘hippocampus Colemani kuiter’や‘hippocampus Pontohi’と呼ばれる種類がいます。

ピグミーシーホースはヨウジウオ科に属し、タツノオトシゴやオイランヨウジなど少なくとも7種類のグループがあり、これらは東南アジアのサンゴ礁三角地帯に生息しています。サンゴ礁三角地帯の中心部に位置するWakatobiでは、少なくとも5種類の生息が確認されています!




ピグミーシーホースに接近するチャンス(マクロショットのチャンス)があったら、お腹の下のへそ辺りを確認して見てください。雄と雌のピグミーシーホースの違いを見る事ができます。雄のピグミーシーホースは、下腹部に小さく細い裂け目がある一方、雌のピグミーシーホースには下腹部に小さな丸い穴があります。

すべてのタツノオトシゴ科の雄は、受精後の育児管理を担当しています。雌の未受精卵は、雄の育児嚢に移され血管から運ばれてくる栄養と酸素を吸収します。11日間から14日間後、卵は 一度に6匹から34匹の赤ちゃんを生んでいる事が記録されています。

デニースピグミーシーホースは、最も小さく、鼻から尾の先端までが、たった1.7cmまでにしか成長しないとても珍しい種類です!数が少なく、隠れ上手なせいか、鋭い目を持つ、ダイブガイドが粘り強く探しても困難を要します!

もし、自分自身でピグミーシーホースを見つけ出したい時は、ハリメダ地帯でわずかに直射日光から保護されている地域を見てみてください。ホワイトピグミーシーホースは、藻類の先端部を好み、わりと浅い水深(9m前後)で見つけることが出来ます。

すべてのピグミーシーホースは、国際自然保護連合の研究で、”データ不足”としてリストされており、まだ明らかになっていないことばかりです。


写真提供:ワカトビゲスト Richard Smith

ピグミーシーホースは、タツノオトシゴ科の中でも形態的に区別されています。他の種類のタツノオトシゴが両側に開く鰓のペアをもっているのに対し、彼らはとても小さいため、頭の背後に1つの開口鰓をもっています。

ピグミーシーホースは見事な擬態で、多くの捕食者から逃れる事ができます。彼らの最大の脅威は、ダイバーとその極端な繊細さの虜になるマクロ派フォトグラファーです。ピグミーシーホースの保護のためWakatobiでは、有名なピグミーシーホースの専門家であり、海洋生物学者のリチャード・スミス氏により作成された‘ダイビングとピグミーシーホース撮影に関するルール’に従ったダイビングを心がけています。スミス氏は研究の為、何度もWakatobiに訪れています。



様々な甲殻類もまた、生い茂ったハリメダ地帯に生息しています。

サラサエビは、集団生活を好み、時には100匹ほどの大集団になります。すべての甲殻類と同様、エビは脱皮を繰り返し成長していきます。また、脱皮することにより、身を守る際に失われた部分を再生したりもします。



次はハリメダ地帯に生息していて、とっても個性的なピグミーパイプホ-スのご紹介です。

Kyonemichthys rumenganiは、世界最小のパイプホースです。彼らの容姿がヨウジウオ(pipefish)とタツノオトシゴ(seahorse)の両方を持ち合わせていることから、パイプホースと呼ばれています。髪の毛と同じくらいの太さしかなく、長さがたったの3〜4cmほどなので、見つけることは非常に困難です。彼らは、藻類の一部に巻き付くために持ち入る細長い尾を持っています。

生物学上でも、とても希少かつ、とても個性的で魅力的な彼らは、拡大鏡を通してみると良く観察することが出来ます。



今度、ダイビングに出かけ海藻のエリアを見つけたら、もう少し接近して観察して見てください! そこには、何か驚くような生き物が潜んでいるかもしれませんよ!



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